KTM 890 Duke GP 2023年モデル
「刺激的なミドルネイキッドを探している」「人とは違う個性的なバイクに乗りたい」「ワインディングをとことん楽しみたい」そんなあなたにぴったりの一台かもしれません。この記事が、あなたのバイク選びの参考になれば幸いです。
先にスペックを確認したい方は、こちらのボタンからジャンプできます。
バイクの概要・特徴
KTM 890 Duke GPは、オーストリアのバイクメーカーKTMがラインナップする、ミドルクラスのネイキッドスポーツモデルです。KTMのミドルネイキッドシリーズの中核を担う「890 Duke」をベースに、MotoGPマシン「RC16」からインスパイアされた特別なカラーリングとグラフィックを纏ったモデルとして、2022年9月に日本国内で登場しました。
そのニックネームはベースモデルと同じく「THE SCALPEL(外科用メス)」。その名の通り、シャープで正確無比なハンドリング性能を特徴としています。890 Duke GPは、スタンダードな890 Dukeの扱いやすさやバランスの良さはそのままに、よりアグレッシブでレーシーなルックスを手に入れた点が最大の魅力です。

心臓部にはパワフルなLC8cパラレルツインエンジンを搭載し、軽量な車体と高品質なWP製サスペンションを組み合わせることで、ストリートからワインディング、さらにはサーキット走行まで、幅広いシーンでエキサイティングな走りを提供します。
なお、KTMにはさらに高性能な上位モデルとして「890 Duke R」も存在します。「R」はより高性能なサスペンション(WP APEX PROコンポーネント)、強力なブレーキ(Brembo Stylemaキャリパー)、よりアグレッシブなライディングポジションなどを採用し、サーキット性能を突き詰めたモデルです。890 Duke GPは、スタンダードな890 Dukeの素性の良さを活かしつつ、特別なスタイルと所有感を加えたモデル、と位置づけることができます。
魅力・注目ポイント
KTM 890 Duke GPが多くのミドルクラスライダーを惹きつける理由、その具体的な魅力と注目ポイントを見ていきましょう。
パワフルかつ扱いやすいLC8cエンジン
搭載される889cc水冷並列2気筒DOHCエンジン(LC8c)は、最高出力116PS(85kW)/9,000rpm、最大トルク92Nm/8,000rpmを発揮。低回転域から十分なトルクを発生し、街中でもスムーズで扱いやすい特性を持ちながら、アクセルを開ければ高回転域まで鋭く吹け上がり、エキサイティングな加速を体感できます。日常的な扱いやすさと、スポーツライディングでの刺激を高次元でバランスさせているのが特徴です。

クラス最高レベルの軽量シャシーと俊敏なハンドリング
エンジンをフレームの一部として利用するクロモリ鋼管トレリスフレームと、軽量なアルミ製リアサブフレームの組み合わせにより、燃料を除く車両重量は約174kg(乾燥重量169kg)という、このクラスでは驚異的な軽さを実現しています。この軽さが、WP製のAPEXサスペンション(フロント倒立フォーク、リアモノショック)と相まって、「THE SCALPEL」の名に恥じない、極めてシャープで正確なハンドリングを生み出します。ライダーの意のままにコーナーを駆け抜ける感覚は、まさに快感です。
先進の電子制御パッケージ
最新の電子制御技術も充実しており、ライダーの走りを安全かつ効果的にサポートします。
- ライディングモード: 天候や路面状況、好みに応じてエンジン特性やトラクションコントロールの介入度を変更できる「SPORT」「STREET」「RAIN」の3モードを標準装備。オプションで、より詳細な設定が可能な「TRACK」モードを追加することも可能です。
- コーナリングABS & MTC(トラクションコントロール): 6軸IMU(慣性計測ユニット)が車体の傾きを検知し、コーナリング中でも最適な制動力と駆動力を制御。スリップダウンのリスクを低減し、安全マージンを高めます。Supermoto ABSモードも搭載し、意図的にリアをスライドさせることも可能です。
- フルカラーTFTディスプレイ: 視認性に優れた大型TFTメーターは、速度、回転数などの基本情報はもちろん、ライディングモードや各種設定情報をカラフルかつ分かりやすく表示。周囲の明るさに応じて輝度が自動調整される機能も備わっています。
- オプション機能: クイックシフター+(アップ/ダウン対応)やMSR(モータースリップレギュレーション)などもオプションで追加でき、さらにスポーティな走りを追求できます。

MotoGP直系の特別なスタイリング
890 Duke GPの最大のアイデンティティとも言えるのが、KTMのファクトリーレーシングチームからインスピレーションを得た専用カラーリングとグラフィックです。鮮やかなオレンジとブラックを基調とし、随所にスポンサーロゴ風のデザインを配置。標準装備されるシングルシートカバーと、オレンジにペイントされたホイールが、そのレーシーな雰囲気をさらに強調しています。他のどのバイクとも似ていない、強烈な存在感と所有欲を満たすデザインが魅力です。

ライバル車種との比較
KTM 890 Duke GPを検討する上で、比較対象となるであろう強力なライバル車種がいくつか存在します。
主なライバル車種
- ヤマハ MT-09 / SP
- トライアンフ Street Triple R / RS
- カワサキ Z900
- ドゥカティ Monster / Monster +
ここでは、特にキャラクターや価格帯が近く、比較されることが多いヤマハ MT-09 (2024年モデル)との違いを中心に見てみましょう。
項目 | KTM 890 Duke GP (2023) | ヤマハ MT-09 (2024国内) |
---|---|---|
エンジン | 889cc 並列2気筒 | 888cc 並列3気筒 |
最高出力 | 116PS (85kW)/9,000rpm | 120PS (88kW)/10,000rpm |
最大トルク | 92Nm/8,000rpm | 93Nm/7,000rpm |
車両重量 | 約174kg (燃料除く) ※1 | 190kg (装備) |
シート高 | 820mm | 825mm |
サスペンション | WP APEX (手動調整) | KYB (手動調整) ※SPはÖhlins/KYB |
新車価格(参考) | 148万円 (税込) ※2 | 125万4000円 (税込) |
特徴 | ・クラス最軽量級 ・シャープなハンドリング ・アグレッシブなGPカラー ・KTMらしい刺激的な乗り味 | ・独特の3気筒サウンド ・低中速トルクと高回転の伸び ・充実装備とコスパ ・洗練された電子制御 |
※1 KTM公式発表の半乾燥重量。装備重量はこれより数kg重くなります。
※2 2023年モデル発売時の価格。最新の価格は販売店にご確認ください。
エンジン特性の違いが大きなポイントです。890 Duke GPのLC8cツインは、鼓動感がありダイレクトなスロットルレスポンスが特徴。一方、MT-09のCP3トリプルは、ツインのトルク感と4気筒のスムーズさを併せ持ち、独特のサウンドとともにリニアに吹け上がります。どちらが良いかは完全に好みの問題ですが、よりワイルドで刺激的なフィーリングを求めるならDuke GP、スムーズさと扱いやすさを重視するならMT-09、という傾向があります。
軽快さでは890 Duke GPに軍配が上がります。装備重量で比較しても10kg以上の差があり、これはコーナリングでの倒し込みの軽さや切り返しの速さに明確に現れます。「THE SCALPEL」の異名は伊達ではありません。
装備と価格では、MT-09が非常に高いコストパフォーマンスを誇ります。890 Duke GPもWP製サスペンションや高度な電子制御を備えていますが、価格はMT-09より高めです。ただし、GPモデルの特別なカラーリングやKTMブランドの所有感に価値を見出すならば、価格差は十分に納得できる範囲でしょう。
トライアンフ Street Triple R/RSは、洗練された3気筒エンジンと上質な足回りが魅力。カワサキ Z900は、パワフルな4気筒エンジンとコスパの良さが光ります。それぞれに個性があり、乗り手の好みや使い方によって最適な選択は変わってきます。890 Duke GPは、その中でも特に「軽さ」「刺激」「個性的なデザイン」を重視するライダーにとって、非常に魅力的な選択肢となるはずです。
どんな人におすすめ?
KTM 890 Duke GPは、そのパフォーマンスとキャラクターから、以下のようなライダーに特におすすめです。
- とにかく軽快で刺激的なネイキッドが欲しいライダー:軽量な車体が生み出すヒラヒラとしたハンドリングと、パンチのあるエンジンの組み合わせは、走る楽しさを純粋に教えてくれます。
- ワインディングロードを主戦場とするライダー:タイトなコーナーが連続するような道で、このバイクの真価は最大限に発揮されます。「外科用メス」のように狙ったラインをトレースする快感を味わえます。
- サーキット走行も楽しみたいアクティブなライダー:基本的なポテンシャルが高いため、オプションのTRACKモードやクイックシフターを追加すれば、サーキットでも存分にスポーツライディングを楽しめます。
- 人とは違う、個性的なバイクに乗りたいライダー:MotoGP由来の特別なカラーリングは、どこへ行っても注目の的。KTM独自の世界観やデザインが好きな人にはたまりません。
- ミドルクラスからのステップアップを考えているライダー:リッタークラスほどの過剰なパワーではなく、扱いやすさも兼ね備えながら、しっかりとスポーツできる性能を持っています。(ただし、全くの初心者にはややハードルが高いかもしれません)
通勤や街乗りもこなせますが、やはりこのバイクが最も輝くのは、アグレッシブに走りを楽しめるステージでしょう。
購入前にチェックしたいポイント
魅力的なKTM 890 Duke GPですが、購入を決める前にいくつか確認しておきたいリアルなポイントがあります。
足つきとか、維持費ってどうなんだろう…?
- 足つき性:シート高は820mm。スペック上は平均的な数値ですが、シート幅や形状の影響もあり、身長によってはカカトが浮く可能性があります。車体が非常に軽いため、多少足つきが悪くても不安感は少ないかもしれませんが、やはり購入前に実車に跨ってみることが最も重要です。停車時の安心感はライディングの楽しさに直結します。
- 取り回し:乾燥重量169kg、燃料を除いた重量でも約174kgと、クラス最軽量級です。そのため、ガレージでの出し入れや押し歩きは比較的楽に行えるでしょう。ハンドル切れ角も極端に小さいわけではないので、慣れればUターンなどもスムーズにこなせるはずです。
- 維持費:KTMはオーストリアのメーカーであり輸入車です。そのため、国産同クラスのバイクと比較すると、部品代や正規ディーラーでの工賃がやや高めになる傾向があります。特にタイヤはハイグリップなものが装着されており、パワフルなエンジン特性もあって摩耗は比較的早くなる可能性があります。オイル交換などの定期メンテナンス費用も、事前にディーラーで確認しておくと安心です。
- 中古市場とリセールバリュー:890 Duke GPは特別仕様モデルであり、新車価格もそれなりにするため、中古市場での流通量はスタンダードモデルほど多くはありません。しかし、KTMブランドの人気とGPモデルの希少性から、リセールバリューは比較的安定していると予想されます。状態の良い車両であれば、高値での売却も期待できるかもしれません。
- 積載性:デザイン優先のネイキッドモデルのため、標準状態での積載性はほぼ期待できません。シート上も小さく、タンデムシート部分もシングルシートカバーで覆われています(タンデムシート自体は付属)。ツーリングなどで荷物を積みたい場合は、KTM純正のパワーパーツや社外品のシートバッグ、タンクバッグ、キャリアなどを別途用意する必要があります。
これらのポイントを理解した上で検討を進めましょう。

まとめ
2023 KTM 890 Duke GPは、ミドルクラスネイキッドの中でも際立った軽快さ、刺激的なパフォーマンス、そして唯一無二のスタイリングを兼ね備えた、非常に魅力的な一台です。
「THE SCALPEL」の名が示す通りのシャープなハンドリングと、パワフルなLC8cエンジン、そしてライダーをサポートする先進の電子制御が、日常から非日常まで、あらゆるシーンでライディングの喜びを増幅させてくれます。特に、MotoGPマシンを彷彿とさせる特別なカラーリングは、所有するライダーの心を強く満たしてくれるでしょう。
決して安価なバイクではありませんが、そのパフォーマンスと個性を考えれば、価格に見合う、あるいはそれ以上の価値を提供してくれるはずです。スタンダードな890 Dukeでは物足りない、よりアグレッシブなスタイルと刺激を求めるライダーにとって、最高の選択肢の一つとなり得ます。
KTMの「READY TO RACE」スピリットを色濃く反映した890 Duke GP。もしあなたが、日常にアドレナリンを求めるライダーであれば、ぜひ一度、KTM正規ディーラーでその姿を確かめ、可能であれば試乗してみてください。その切れ味鋭い走りの虜になること請け合いです。
スペック
以下は、KTM 890 Duke GP (2023年モデル) の主要スペックです。
価格 | 1,480,000円(税込) ※2023年モデル発売時 |
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年式 | 2023年 |
エンジン形式 | 水冷4ストローク並列2気筒 DOHC 4バルブ |
排気量 | 889cc |
最高出力 | 85 kW (116 PS) / 9,000 rpm |
最大トルク | 92 Nm / 8,000 rpm |
ミッション形式 | 6速 |
フレーム形式 | クロモリ鋼管トレリスフレーム(パウダーコート) |
サスペンション(前) | WP APEX 43 倒立フォーク |
サスペンション(後) | WP APEX モノショック(プリロード調整付き) |
タイヤサイズ(前) | 120/70 ZR 17 |
タイヤサイズ(後) | 180/55 ZR 17 |
ブレーキ形式(前) | ダブルディスク、ラジアルマウント4ピストンキャリパー (300mm) |
ブレーキ形式(後) | シングルディスク、2ピストンキャリパー (240mm) |
ABS | Bosch 9.1 MP (コーナリングABS、Supermotoモード含む) |
ホイールベース | 1,476 mm ± 15 mm |
シート高 | 820 mm |
車両重量(乾燥) | 169 kg |
車両重量(燃料除く) | 約 174 kg |
タンク容量 | 約 14 L |
燃費(WMTCモード値) | 4.8 L / 100 km (約20.8 km/L) ※参考値 |
乗車定員 | 2名 (シングルシートカバー標準装備) |
カラー | GP Orange |
※上記スペックは主にKTM Japan公式サイト(2023年モデル)および海外情報を参考にしています。仕様は予告なく変更される場合があります。最新の情報は正規ディーラーにご確認ください。
この記事は2023年モデルのKTM 890 Duke GPについて記述しています。