この記事でわかること
- バイクヘルメットの重要性と種類
- ヘルメットの安全基準(SG、PSC、JISマークなど)
- 初心者向けヘルメット選びの5つのポイント
- 人気のヘルメットブランド
- ヘルメットの手入れ方法と寿命
バイクで風を感じながら走る。それは、何物にも代えがたい自由と興奮を与えてくれる素晴らしい体験です。しかし、その楽しさは常に危険と隣り合わせ。特にバイクに乗り始めたばかりの初心者ライダーにとって、万が一の事故から身を守る装備は絶対に欠かせません。
数あるバイク装備の中でも、ヘルメットはライダーの命を守る最重要アイテムです。頭部は非常にデリケートで、事故の際に最も保護すべき部位。適切なヘルメットを選ぶことが、安全で楽しいバイクライフを送るための、まさに第一歩となります。
「でも、ヘルメットって種類がたくさんあって、どれを選べばいいかわからない…」
そんな不安を抱える初心者ライダーのために、この記事ではヘルメット選びの基本から、安全基準、具体的な選び方のポイント、人気ブランド、そして手入れの方法まで、知っておくべき情報を網羅的に解説します。ぜひ、あなたにぴったりのヘルメットを見つけるための参考にしてください。
まずは知ろう!バイクヘルメットの主な種類と特徴
バイクヘルメットは、形や機能によっていくつかのタイプに分けられます。それぞれにメリット・デメリットがあり、保護性能や快適性も異なります。自分のライディングスタイルや好みに合わせて選びましょう。
フルフェイスヘルメット:安全性No.1!初心者におすすめ

フルフェイスの特徴
頭部全体から顔、アゴまでを完全に覆う形状。最も保護性能が高いタイプです。
- メリット:
- 圧倒的な保護性能: あらゆる方向からの衝撃、特に転倒時に強打しやすいアゴ部分までしっかりガード。
- 風雨・寒さ・騒音対策: 外部からの影響を受けにくく、高速走行や長距離ツーリングでも快適。
- デメリット:
- 夏場は内部が蒸れやすい。
- 人によっては閉塞感を感じる。
- ヘルメットを被ったままの飲食や会話は難しい。
ジェットヘルメット:開放感が魅力!でも注意点も

ジェットの特徴
顔の部分が大きく開いており、開放感と広い視野が特徴。街乗りに人気。
- メリット:
- 開放感: 風を直接感じられ、夏場は涼しい。
- 広い視野: 周囲の状況を確認しやすい。
- 着脱が容易: フルフェイスに比べて軽く、被りやすい。
- コミュニケーション: 被ったままでも会話などがしやすい。
- デメリット:
- 顔面・アゴの保護性能がない: 転倒時に顔やアゴを負傷するリスクが高い。
- 高速走行時に風切り音や風圧を受けやすい。
- 雨天時など天候の影響を受けやすい。
開放感は魅力的ですが、安全面での不安が残ります。もし選ぶ場合は、リスクを理解した上で慎重に検討しましょう。
システムヘルメット:フルフェイスとジェットのいいとこ取り?


システムの特徴
アゴ部分(チンガード)がヘルメット上部に開閉(フリップアップ)できる多機能タイプ。
- メリット:
- 利便性: 停車時にチンガードを開ければ、飲食や会話、メガネの着脱が容易に。
- 安全性: 閉じていればフルフェイスに近い保護性能を発揮(モデルによる)。
- デメリット:
- 開閉機構がある分、フルフェイスより重くなる傾向がある。
- 構造上、一体型のフルフェイスより保護性能が若干劣る可能性がある。
- モデルによっては風切り音が大きい場合がある。
フルフェイスの安全性とジェットの利便性を両立したいライダーに人気ですが、重量や価格を考慮して選びましょう。
オフロードヘルメット:特定のシーンで活躍

オフロードの特徴
モトクロスなど、未舗装路走行に特化。長いバイザーと突き出たアゴ部分が特徴。ゴーグルと併用する。
- メリット:
- 高い通気性: 激しい運動でも蒸れにくい。
- 防塵・防泥性: ゴーグル使用で泥やホコリから目を守る。
- 広い視野: オフロードでの状況把握に適している。
- デメリット:
- 高速走行には不向き(風圧を受けやすい)。
- シールドがないため、雨天時の視界確保が難しい。
主にオフロード走行を楽しむためのヘルメットであり、一般的な公道走行にはあまり適していません。
ハーフヘルメット:手軽だけど安全性は…?


ハーフの特徴
頭頂部のみを覆う最もコンパクトなタイプ。「半ヘル」「半キャップ」とも呼ばれる。
- メリット:
- 非常に軽量で開放感が高い。
- 着脱が最も簡単。
- デメリット:
- 保護範囲が極端に狭く、安全性が非常に低い。顔、耳、後頭部などが無防備。
手軽さはありますが、万が一の事故の際に頭部を十分に保護できません。安全面を考えると、初心者ライダーには絶対におすすめできません。
安全の証!ヘルメットの「マーク」をチェックしよう
ヘルメットを選ぶ際、デザインや機能だけでなく、「安全基準を満たしているか」を確認することが非常に重要です。ヘルメットには、その安全性能を示すマークが付いています。
日本の安全基準:SG・PSC・JISマークとは?
日本国内でバイク用ヘルメットとして販売・使用するためには、国の定める安全基準を満たしている必要があります。
- PSCマーク(必須):
- 消費生活用製品安全法に基づく、国が定めた強制的な安全基準です。
- このマークがないヘルメットは、日本国内で「バイク用ヘルメット」として販売することも、公道で使用することも法律で禁止されています。
- ヘルメットを選ぶ際は、まずPSCマークが付いていることを必ず確認しましょう。
- SGマーク:
- 一般財団法人製品安全協会が定める任意の安全基準です。
- 大きな特徴は、SGマーク付き製品の欠陥によって人身事故が起きた場合に、賠償措置が受けられる点です。(※全ての事故が対象ではありません)
- 現在、国内メーカーのバイク用ヘルメットには、PSCマークと合わせてSGマークも付いているのが一般的です。
- JISマーク:
- 日本産業規格(JIS)に基づく、任意の工業製品規格です。
- 衝撃吸収性や耐貫通性など、より詳細な基準が定められています。
- 125cc以下用(1種)と排気量無制限用(2種)があります。
- PSC/SGマークに加えてJISマークも取得しているヘルメットは、より高い品質基準を満たしていると言えます。
日本でバイクに乗るなら、最低限PSCマークが付いているヘルメットを選びましょう!SGマークやJISマークが付いていれば、さらに安心感が高まります。
海外の安全基準にも注目(参考)
海外メーカーのヘルメットには、以下のような安全基準マークが付いていることもあります。
- DOT(アメリカ): 米国運輸省の基準。メーカー自己認証。
- ECE(ヨーロッパ): 欧州経済委員会の基準。第三者機関認証で信頼性が高いとされる。最新は「ECE 22.06」。
- Snell(アメリカ): 米国の非営利団体による非常に厳しい任意規格。レース用ヘルメットなどに採用されることが多い。
これらの海外規格ヘルメットも日本で販売されていますが、日本の公道で使用する場合は、必ずPSCマークが付いている必要があります。
安全基準マーク比較表
安全基準 | 管轄/団体 | 認証 | 日本での法的要件 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
PSC | 国(消費生活用製品安全法) | 義務 | 販売・公道使用に必須 | 日本の基本的な安全基準 |
SG | 製品安全協会 | 任意 | (PSCがあればOK) | 賠償制度あり |
JIS | 国(日本産業規格) | 任意 | (PSCがあればOK) | 日本の工業製品品質基準(1種/2種あり) |
DOT | 米国運輸省 | 自己認証 | 要PSCマーク | アメリカの基準 |
ECE | 欧州経済委員会 | 第三者 | 要PSCマーク | ヨーロッパの主要基準、信頼性が高いとされる |
Snell | Snell Memorial Foundation(米非営利) | 任意 | 要PSCマーク | 非常に厳しい任意規格 |
失敗しない!初心者向けヘルメット選び 5つのポイント
安全基準を確認したら、次は自分に合ったヘルメットを選ぶための具体的なポイントを見ていきましょう。
① サイズとフィット感:最重要!必ず試着しよう
ヘルメット選びで最も重要なのが、サイズとフィット感です。どんなに安全基準を満たしていても、サイズが合っていなければ、万が一の際に十分な保護性能を発揮できません。
- 頭囲を測る: 柔らかいメジャーを使い、眉の上あたりと耳のすぐ上を通るラインで、水平に頭の一番外周が大きい部分を測ります。
- サイズを選ぶ: 測定値をもとに、メーカーのサイズ表を参考にサイズを選びます。ただし、メーカーやモデルによって同じサイズ表記でも大きさや形状が異なるため、あくまで目安と考えましょう。
- 必ず試着する: 気になるヘルメットが見つかったら、絶対に試着してください。
- 被り心地: ヘルメットを深く被り、頭全体が均等に包まれているか、どこか一点だけ強く当たって痛くないかを確認します。
- 頬のフィット感: チークパッド(頬パッド)が頬に軽く密着し、少し圧迫感があるくらいが適切です。(使い込むうちに少し馴染んできます)
- ズレないか確認: ヘルメットを被った状態で、手でヘルメットを持って上下左右に動かしてみます。頭の皮膚が一緒に動く程度で、ヘルメットだけが大きくズレたり、グラグラしたりしないか確認します。頭を振ってみても同様です。
- あごひも: 正しく締め(指1本入る程度)、緩みがないか確認します。
- 少し時間を置く: 可能であれば、試着したまま5~10分ほど店内で過ごしてみましょう。短時間では感じなかった痛みや不快感が出てくることがあります。
頭の形も人それぞれです(丸型、卵型など)。 アライやショウエイなど一部のブランドでは、内装パッドの厚みを調整してフィット感を高めるサービス(フィッティングサービス)を行っている場合もあります。
② 重さ:首への負担を考えて
ヘルメットの重さは、特に長時間のライディングでの快適性に影響します。重いヘルメットは首や肩への負担が大きく、疲労の原因になります。
一般的に、保護性能が高いヘルメットや多機能なヘルメット(システムヘルメットなど)は重くなる傾向があり、シンプルな構造のヘルメットや高価な素材(カーボンなど)を使ったヘルメットは軽くなります。
初心者の方は、運転に慣れるまでは比較的軽量なモデルを選ぶと負担が少ないですが、軽さだけを追求するのではなく、安全性とのバランスを考えて選びましょう。
③ 通気性:快適なライディングのために
ヘルメット内部の蒸れは不快なだけでなく、集中力の低下にもつながります。特に夏場は、通気性の良し悪しが快適性を大きく左右します。
- ベンチレーション: ヘルメットに付いている空気の取り入れ口(インテーク)と排出口(アウトレット)の位置や数、開閉機能を確認しましょう。
- 効果: 走行風を効率よく取り込み、内部の熱気や湿気を排出することで、蒸れを軽減し、シールドの曇りを防ぐ効果も期待できます。
走行シーンや季節に合わせて空気の流れを調整できるモデルがおすすめです。
④ 視界:安全運転の基本
安全運転のためには、周囲の状況をしっかりと把握できる広い視界が必要です。
- 視野の広さ: ヘルメットを被った状態で、上下左右の視界が十分に確保されているか確認しましょう。特に左右の周辺視野は、車線変更などの安全確認で重要です。
- シールドのクリアさ: シールドに歪みや傷がないか確認しましょう。クリアな視界は安全運転の基本です。
⑤ その他の機能:あると便利!
最近のヘルメットには、快適性や利便性を高める様々な機能が付いています。
- インナーバイザー(サンバイザー): ヘルメット内部に格納されたスモークシールド。日差しが眩しい時に、レバー操作などで素早く下ろせて便利です。トンネルなどに入る際はすぐに上げられます。
- Bluetoothインカム対応: ヘルメットにスピーカーやマイクを取り付けるスペースが確保されており、インカム(無線通話装置)をスマートに装着できます。ナビ音声を聞いたり、仲間と会話したりするのに便利です。(※運転中の操作は安全に十分注意してください)
- メガネ用スリット: メガネのツルがスムーズに入るように、内装に工夫がされているモデルもあります。メガネユーザーはチェックしましょう。
- 緊急時ヘルメット取り外しシステム: 一部の高性能ヘルメットには、事故の際に救護者がヘルメットを安全に取り外せるような仕組み(例:EQRS)が付いています。
これらの機能は必須ではありませんが、自分の使い方に合わせて、あると便利な機能が付いているかどうかもチェックしてみましょう。
人気ブランドは?主要ヘルメットメーカー紹介
信頼できるヘルメットを選ぶ上で、ブランドも一つの指標になります。ここでは、日本で人気のある主要なヘルメットメーカーをいくつか紹介します。
- アライ (Arai):
- 「かわす性能」を追求した丸いフォルムが特徴の日本の老舗。職人による手作りにこだわり、高い安全性と品質で世界的に評価されています。レースシーンでも絶大な信頼を得ています。
- ショウエイ (Shoei):
- アライと並ぶ日本のトップブランド。先進技術を積極的に取り入れ、空力性能や静粛性、快適性に優れたヘルメットを開発。デザイン性も高く、幅広い層に人気です。フィッティングサービスも充実。
- OGKカブト (OGK Kabuto):
- 「安全とデザイン」を両立し、コストパフォーマンスに優れたモデルも多い日本のブランド。空力性能を意識したデザインが特徴。初心者からベテランまで選びやすいラインナップです。
- HJC:
- 韓国発祥の世界的なヘルメットメーカー。手頃な価格のエントリーモデルから高性能なレースモデルまで幅広く展開。コストパフォーマンスの高さが魅力です。
- BELL:
- アメリカの老舗ブランド。クラシカルなデザインから最新のレーシングモデルまで、多様なラインナップが特徴。安全性とデザイン性を兼ね備えています。
この他にも、イタリアのAGVやNolan、アメリカのICONやScorpionなど、様々なブランドがあります。デザインの好みや予算に合わせて検討してみましょう。
大切なヘルメットを長持ちさせるには?手入れと寿命
お気に入りのヘルメットも、正しく使って、きちんとお手入れしなければ、性能を維持できません。
日頃のメンテナンス方法
- 外装: 柔らかい布を水または薄めた中性洗剤で濡らし、固く絞って優しく拭きます。コンパウンド(研磨剤)入りのクリーナーは塗装を傷める可能性があるので注意。
- 内装: 取り外せるタイプの内装は、洗濯表示に従って手洗いなどで洗濯します。取り外せない場合は、ヘルメット内装用のクリーナーを使うか、固く絞った布で拭きましょう。しっかり乾燥させることが重要です。
- シールド: 専用クリーナーか水で優しく洗い、柔らかい布で拭き上げます。傷つきやすいのでゴシゴシ擦らないように注意。
- 保管: 高温多湿、直射日光を避け、風通しの良い場所で保管します。ヘルメットホルダーにかけっぱなしにせず、専用の袋などに入れて保管するのがおすすめです。
ヘルメットの寿命と買い替え時期
ヘルメットは、見た目に問題がなくても、経年劣化によって衝撃吸収性能が低下していきます。
- 買い替えの目安:
- 使用開始から約3年
- 製造年月日から約5年 (ヘルメット内部に製造年月表示あり)
- こんな時はすぐに交換!:
- 一度でも大きな衝撃を受けた場合 (転倒、落下など)。内部の衝撃吸収材が潰れている可能性があります。
- 内装がへたって、フィット感が緩くなった場合。
- あごひもやバックルに損傷がある場合。
安全のため、定期的な点検と適切な時期での買い替えを心がけましょう。
迷ったら参考に!初心者におすすめヘルメット例
「色々説明されたけど、結局どれがいいの?」という方のために、初心者にも比較的選びやすく、人気のあるモデルをいくつかご紹介します。(※価格や機能は変動する可能性があるため、最新情報は各メーカーHPや販売店でご確認ください。)


HJC i10 / C10: 高い安全基準(ECE 22.06など)を満たしながら、リーズナブルな価格が魅力のフルフェイス。16,500円(税込み)


OGK Kabuto KAMUI 3: 日本ブランドの安心感と、インナーサンシェードなどの便利な機能を備えたフルフェイス。デザインも豊富。39,600円(税込み)


Shoei Z-8 / GT-Air II: 軽量コンパクトで扱いやすいZ-8、ツーリングに便利な機能満載のGT-Air II。やや高価ですが、品質と快適性は抜群。62,700円(税込み)


Arai RAPIDE-NEO: クラシカルなデザインが人気のRAPIDE-NEO、快適性と安全性を高次元で両立したASTRO-GX。アライならではの高い安全性。。58,300円(税込み)


BELL Qualifier DLX MIPS: MIPS(回転衝撃保護システム)を搭載し、安全性を高めたエントリーモデル。52,000円(税込み)
ただし、これらはあくまで一例です。 前述の通り、フィット感が最も重要ですので、必ずバイク用品店などで実際に試着して、自分の頭にぴったり合うものを選んでください。
ヘルメットは進化している!最新技術にも注目(軽く触れる)
バイクヘルメットは、ライダーの安全と快適性を追求し、日々進化しています。
- 素材: カーボンファイバーなど、より軽くて強い素材が使われるようになっています。
- 安全技術: 衝撃吸収性だけでなく、脳への回転衝撃を軽減するMIPSなどの技術も注目されています。
- 快適機能: インナーバイザーの標準装備化、Bluetoothインカムとの連携強化、静粛性の向上など、より快適なライディングをサポートする機能が充実しています。
- 視認性: 蛍光色や反射材を使ったデザイン、LEDライトを搭載したモデルなど、他の車両からの視認性を高める工夫も進んでいます。
最新技術に触れてみるのも、ヘルメット選びの楽しみの一つかもしれません。
まとめ:最高のヘルメットで、安全で楽しいバイクライフを!
ヘルメットは、あなたのバイクライフを守る、最も重要なパートナーです。種類、安全基準、フィット感、機能、デザイン…選ぶべきポイントはたくさんありますが、この記事が、あなたのヘルメット選びの一助となれば幸いです。
焦らず、じっくりと、そして必ず試着して、自分にぴったりのヘルメットを見つけてください。
最高のヘルメットを手に入れて、安全運転を心がけ、素晴らしいバイクの世界を思いっきり楽しみましょう!