YAMAHA YZF-R1M 2025年モデル
ヤマハのスーパースポーツ最高峰モデル、YZF-R1M。その名は、サーキットで培われた技術と情熱の結晶として、多くのライダーの憧れの的となっています。2025年モデルでは、さらなる進化を遂げ、その存在感を一層強固なものにしました。
「YZF-R1Mってどんなバイク?」「標準モデルのR1と何が違うの?」「自分に合っているかな?」といった疑問を持つ方は、ぜひ最後までご覧ください。
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バイクの概要・特徴
ヤマハ YZF-R1Mは、「サーキット走行で本領を発揮する高性能スーパースポーツ」として明確に位置づけられています。ヤマハのMotoGPマシン「YZR-M1」で培われたレーシングテクノロジーを惜しみなく投入し、同社の「Rシリーズ」におけるフラッグシップモデルとしての地位を確立しています。
初代YZF-R1Mが登場したのは2015年。日本国内への正式導入は2020年頃とされており、常に最新技術が注ぎ込まれてきました。2025年モデルでは「GP teched R1」というコンセプトを掲げ、MotoGPからのフィードバックをさらに色濃く反映しています。
その主な変更点として、まず目を引くのがMotoGPマシン風の大型カーボン製ウイングレットです。
サイドカウル上部に新たに設けられたこのウイングレットは、ダウンフォースを発生させることで高速走行時の安定性を高め、特にブレーキングやコーナリングでの接地感を向上させます。同時に、加速時のフロントリフト(ウイリー)抑制にも貢献。カーボンファイバー製とすることで、軽量化と高剛性を両立し、R1Mのプレミアム感を際立たせています。
もう一つの変更点は、新しいシート表皮の採用です。ライダーとパッセンジャー双方のグリップ力を向上させるテクスチャーパターンが施され、ライディング中のホールド性がアップ。特にアグレッシブなコーナリング時に、ライダーとマシンの一体感を高め、より精密なコントロールをサポートします。
エンジンや主要な電子制御システムは、定評のある前年モデルから基本的に受け継がれており、2025年モデルのアップデートは、主に空力性能とライダーインターフェースの洗練に重点が置かれていると言えるでしょう。

標準モデル YZF-R1との違い
YZF-R1Mには、兄弟モデルとして標準仕様の「YZF-R1」が存在します。2025年モデルでは、R1もR1Mと同様にウイングレットと新シート表皮を採用しています。しかし、R1Mは以下の点で明確に差別化され、より特別な存在となっています。
- サスペンション: R1Mは前後ともにオーリンズ製の電子制御レーシングサスペンション(ERS)を搭載。走行状況に応じて減衰力をリアルタイムで最適化します。一方、R1はKYB製の高性能サスペンションを採用しています。
- 外装: R1Mはフロントカウルとリアカウルに軽量なカーボンファイバーを使用。見た目の高級感だけでなく、軽量化にも貢献します。
- ホイール: R1Mは軽量なマグネシウム鋳造ホイールを装備。バネ下重量を軽減し、俊敏なハンドリングを実現します。
- タイヤ: R1Mはよりワイドな200/55ZR17サイズのリアタイヤを装着(R1は190/55ZR17)。グリップ力とハンドリング特性に違いをもたらします。
- 特別装備: R1Mには、所有感を満たすシリアルナンバー入りエンブレムや、バフ仕上げのアルミ製燃料タンクなどが与えられています。
標準モデルのR1も2025年モデルでブレンボ製ブレーキシステムを採用するなど性能向上が図られていますが、R1Mはより高度なサスペンション、軽量素材、特別な装備によって、そのプレミアムな地位を確固たるものにしています。
ポイント:YZF-R1Mは、標準のR1をベースに、サーキット走行に特化した最高級パーツ(特にオーリンズ電子制御サスとカーボン外装)を奢った、ヤマハのスーパースポーツ最高峰モデルです。
魅力・注目ポイント
2025年 YZF-R1Mの魅力を、技術的な側面からさらに深掘りしてみましょう。
心臓部:クロスプレーン・クランクシャフト・エンジン
YZF-R1Mの心臓部には、ヤマハ独自のクロスプレーン・クランクシャフトを採用した997cc水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブエンジンが搭載されています。これはMotoGPマシン YZR-M1譲りの技術であり、不等間隔爆発によって生み出されるリニアなトルク感とダイレクトなスロットルレスポンスが最大の特徴です。
ライダーはエンジンの駆動力を純粋なトルクとして感じやすく、トラクションを掴みやすいというメリットがあります。最高出力は200PS/13,500rpm、最大トルクは113Nm/11,500rpm(国内仕様)と、圧倒的なパワーを発揮します。
エンジン内部には、軽量・高強度なFSチタン製コンロッドや鍛造アルミピストン、フィンガーロッカーアームなどを採用し、高回転域での信頼性とパフォーマンスを追求。排気系には軽量なチタン製4-2-1ミッドシップマフラーと、排気効率を最適化する排気デバイスが装備されています。

ライダーを支える先進の電子制御
YZF-R1Mは、ライダーがそのポテンシャルを最大限に引き出し、かつ安全にライディングを楽しむための高度な電子制御システムを満載しています。これらの多くは6軸IMU(慣性計測ユニット)からの情報を基に、極めて緻密な制御を行います。
- TCS(トラクションコントロール): ホイールスピンを抑制。
- SCS(スライドコントロール): コーナーでの横滑りを制御。
- LIF(リフトコントロール): ウイリーを抑制。
- EBM(エンジンブレーキマネジメント): エンジンブレーキの効きを3段階で調整可能。
- QSS(クイックシフトシステム): クラッチ操作不要でスムーズなシフトアップ/ダウンが可能。
- LCS(ローンチコントロール): スタートダッシュを最適化。
- BC(ブレーキコントロール): コーナリング中も安定した制動を可能にするABS。2つのモードを選択可能。
- YRC(ヤマハライドコントロール): 各制御システムの介入度やパワーモードを統合的に設定できるライディングモード。
これらのシステムは、ライダーのスキルレベルや走行状況に合わせて細かく調整でき、サーキットでも公道でも大きな安心感とパフォーマンス向上をもたらします。

卓越したハンドリングを生む足回り
フレームには、軽量かつ高剛性なアルミニウム製デルタボックスフレームを採用。優れた剛性バランスにより、俊敏性と安定性を両立したハンドリングを実現しています。
そして、YZF-R1Mを象徴するのが、前述のオーリンズ製電子制御レーシングサスペンション(ERS)です。
フロントには加圧式のNPX倒立フォーク、リアにはリンク式モノクロスショックを採用し、IMUやセンサーからの情報に基づいて減衰力をリアルタイムで自動調整。ブレーキング、コーナリング、加速といったあらゆる状況で、常に最適なサスペンションセッティングを提供し、路面に吸い付くような接地感と抜群のコントロール性を実現します。

視認性と機能性に優れたメーター
メーターパネルには、フルカラーTFT液晶ディスプレイが採用されていると推測されます(米国仕様では4.2インチ)。速度、回転数、ギアポジション、ライディングモード、各種電子制御の作動状況など、豊富な情報をクリアに表示。
サーキット走行を意識した表示モードやラップタイマー機能も備えていると考えられます。さらに、米国仕様ではGPSによるコースマッピングやデータロガー機能、スマートフォン連携機能も搭載されており、国内仕様での搭載も期待されるポイントです。
唯一無二のカラーリング
2025年モデルのYZF-R1M ABS(国内仕様)のカラーバリエーションは、「ブラックメタリックX(カーボン)」の1色のみです。
ブラックを基調としながら、カウル類に本物のカーボンファイバーの質感が際立つ、非常にレーシーでプレミアムなカラーリングです。特に、バフ仕上げが施されたアルミ製燃料タンクは、クリアコート越しに鈍い輝きを放ち、特別なモデルであることを主張しています。

ライバル車種との比較
1000ccクラスの国産スーパースポーツで、YZF-R1Mの直接的なライバルとなるのは、やはりホンダ CBR1000RR-R FIREBLADE SPでしょう。
項目 | ヤマハ YZF-R1M (2025) | ホンダ CBR1000RR-R SP (参考:2024) |
---|---|---|
エンジン | 997cc 直列4気筒 (クロスプレーン) | 999cc 直列4気筒 |
最高出力 | 200PS / 13,500rpm | 218PS / 14,000rpm |
車両重量 | 203kg | 201kg |
サスペンション | オーリンズ 電子制御 (ERS) | オーリンズ 電子制御 (Smart EC) |
ブレーキ(前) | 油圧式ダブルディスク | ブレンボ Stylema R |
特徴 | カーボン外装、マグホイール、MotoGP直系技術 | 空力性能、高回転型エンジン、軽量 |
価格(税込) | 3,289,000円 | 3,179,000円 |
※CBR1000RR-R SPは2024年モデルの情報を参考にしています。最新情報は公式サイトでご確認ください。
両車ともにサーキットでのパフォーマンスを追求した最高峰モデルであり、オーリンズ製電子制御サスペンションやブレンボ製ブレーキ、高度な電子制御システムなど、共通する装備も多いです。
どちらを選ぶかは、ライダーの好み(エンジンフィール、ブランドイメージ、デザインなど)や、重視するポイントによって分かれるところです。R1Mは、よりヤマハらしい独創性とMotoGPとの繋がりを強く感じたいライダーに響くかもしれません。
どんな人におすすめ?
ヤマハ YZF-R1Mは、以下のようなライダーに特におすすめできるモデルです。
- サーキット走行を本格的に楽しみたい経験豊富なライダー
- 最先端の電子制御や最高級の足回りを求めるテクノロジー志向のライダー
- ヤマハのレーシングスピリットやMotoGPマシンに憧れを持つライダー
- 所有欲を満たすプレミアムな限定モデルに乗りたいライダー
その圧倒的なパフォーマンスとサーキットに最適化された設計から、バイク初心者の方や、主な用途が街乗り・通勤、ゆったりとした長距離ツーリングであるライダーには、正直なところあまり向いていません。アグレッシブなライディングポジションや、低回転域でのクロスプレーンエンジン特有の鼓動感は、慣れが必要な場合もあります。
注意:YZF-R1Mは非常に高性能なマシンです。その性能を安全に楽しむためには、相応のライディングスキルと経験が求められます。
購入前にチェックしたいポイント
YZF-R1Mの購入を検討する際に、いくつか注意しておきたい点があります。
- 価格: メーカー希望小売価格は3,289,000円(税込)と、国産スーパースポーツの中でも最高クラスです。購入費用だけでなく、高性能パーツゆえの維持費(タイヤ、オイル、消耗品など)も考慮する必要があります。
- 限定供給: YZF-R1Mは生産数が限られており、2025年モデルの日本国内向け受注は既に予約期間内に生産上限に達し、終了しています。新車での入手は非常に困難であり、中古市場での動向を注視する必要があります。
- 足つき性: シート高は860mmと比較的高めです。オーリンズ製サスペンションは初期荷重で多少沈みますが、小柄なライダーは跨ってみて足つきを確認することをおすすめします。
- 取り回し: 車両重量は203kgと、リッタークラスとしては標準的ですが、重心が高めなスーパースポーツ特有の取り回し感覚があります。
- リセールバリュー: 限定モデルであり、高い人気を誇るため、リセールバリューは比較的高値で安定する傾向にあります。ただし、走行距離や車両状態に大きく左右されます。
まとめ
2025年ヤマハ YZF-R1Mは、MotoGP直系の技術と思想を色濃く反映した、ヤマハスーパースポーツの頂点に立つモデルです。
新たに採用されたカーボン製ウイングレットによる空力性能の向上、グリップを高めた新シート表皮、そして熟成の域に達したクロスプレーンエンジンとオーリンズ製電子制御サスペンション(ERS)、高度な電子制御システムが融合し、サーキットで比類なきパフォーマンスを発揮します。
その性能、装備、そして価格は、まさに特別な一台であることを示しており、ターゲットとするのは限られた経験豊富なライダーでしょう。残念ながら2025年モデルの新車受注は既に終了していますが、その存在は多くのバイクファンの心を捉えて離しません。
もし中古市場などで出会う機会があれば、その研ぎ澄まされたパフォーマンスとオーラをぜひ体感してみてください。
よくある質問
Q.YZF-R1M 2025年モデルの価格は?
A.日本国内仕様のメーカー希望小売価格は3,289,000円(税込)です。ただし、2025年モデルの受注は既に終了しています。
Q.YZF-R1M 2025年モデル(国内仕様)の最高出力と最大トルクは?
A.最高出力は200PS(147kW)/ 13,500rpm、最大トルクは11.5kgf-m(113Nm)/ 11,500rpmです。
Q.YZF-R1Mと標準のYZF-R1の主な違いは?
A.主な違いは、R1Mがオーリンズ製電子制御サスペンション(ERS)、カーボン製外装(フロント・リアカウル)、マグネシウム鋳造ホイール、幅広のリアタイヤ(200幅)、バフ仕上げアルミタンク、シリアルナンバーなどを装備している点です。標準のR1はKYB製サスペンション、標準素材の外装、アルミホイール(おそらく)、190幅リアタイヤなどを採用しています。詳しくは本文の「標準モデル YZF-R1との違い」をご参照ください。
スペック
ヤマハ YZF-R1M ABS 2025年モデル(国内仕様)
価格 | 3,289,000円(税込) |
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年式 | 2025年 |
排気量 | 997cc |
最高出力 | 200PS(147kW)/ 13,500rpm |
最大トルク | 11.5kgf-m(113Nm)/ 11,500rpm |
エンジン形式 | 水冷4ストローク並列4気筒 DOHC 4バルブ (クロスプレーン) |
ミッション形式 | 常時噛合式6段リターン |
タイヤサイズ(前) | 120/70ZR17M/C (58W) |
タイヤサイズ(後) | 200/55ZR17M/C (78W) |
ブレーキ形式(前) | 油圧式ダブルディスク (ABS) |
ブレーキ形式(後) | 油圧式シングルディスク (ABS) |
サスペンション(前) | テレスコピック(倒立・オーリンズ電子制御ERS) |
サスペンション(後) | スイングアーム(リンク式・オーリンズ電子制御ERS) |
全長×全幅×全高 | 2,055mm × 690mm × 1,165mm |
ホイールベース | 1,405mm |
シート高 | 860mm |
車両重量 | 203kg(装備重量) |
タンク容量 | 17L(無鉛プレミアムガソリン指定) |
燃費(WMTC) | 15.2km/L(クラス3-2、1名乗車時) |
乗車定員 | 2名 |
カラー | ブラックメタリックX(カーボン) |
※スペック情報はヤマハ発動機公式サイトおよび信頼できる情報源を基に記載しています。