KTM 890 SMT 徹底解説【2024年モデル】スペック・特徴・評価まとめ

KTM 890 SMT 2024年モデル

「ワインディングを駆け抜ける鋭い走り」と「どこまでも走り続けたくなる快適性」。一見、相反する要素を高い次元で融合させた異色のマシン、それがKTM 890 SMTです。この記事では、2024年モデルのKTM 890 SMTについて、そのユニークなコンセプトから詳細なスペック、実際の評価、そして購入前に知っておきたいポイントまで、バイク初心者にも分かりやすく徹底的に解説します。

先にスペックを確認したい方は、こちらのボタンからジャンプできます。

目次

バイクの概要・特徴

KTM 890 SMTは、その名の通り「Supermoto Touring(スーパーモタードツーリング)」という独自のコンセプトを掲げるモデルです。スーパーモタード由来のアグレッシブで俊敏なハンドリング性能と、長距離走行を快適にこなすツーリング性能を併せ持つ、まさに「二刀流」のバイクと言えるでしょう。

このモデルは、かつて人気を博した「KTM 990 SMT」の現代版とも言える存在。往年のファンの期待に応えつつ、最新のテクノロジーとパワフルな889cc並列2気筒エンジン「LC8c」を搭載し、新たなライダー層にもアピールしています。KTM Japanの公式サイトでは「スポーツツアラー」カテゴリーに分類されており、そのキャラクターが明確に示されています。

主な特徴は以下の通りです。

  • スーパーモト由来のデザインとライディングポジション:アップライトで自由度の高いポジションは、スポーティーな走りにもリラックスしたツーリングにも対応します。
  • パワフルかつ扱いやすいLC8cエンジン最高出力105PS、最大トルク100Nmを発揮し、低回転から高回転までスムーズで力強い加速を提供します。
  • 専用チューニングされたWP製サスペンション:前後180mmという長めのストロークを持つWP APEXサスペンションが、優れた路面追従性と快適な乗り心地を実現します。
  • 先進の電子制御システム:コーナリングABS(Supermotoモード付)やトラクションコントロール、ライドモードなど、最新の安全・快適装備を搭載しています。

2024年モデルの日本での発売は2023年8月。派生グレード(SEやSPなど)は設定されておらず、単一グレードでの展開となります。

魅力・注目ポイント

KTM 890 SMTが持つ独自の魅力と、注目すべき技術的なポイントを詳しく見ていきましょう。

① パワフルかつフレキシブルなLC8cエンジン

心臓部には、KTMのミドルクラスで定評のある889cc並列2気筒エンジン「LC8c」を搭載。最高出力105PS、最大トルク100Nmというスペックは、ワインディングでの鋭い加速や高速道路での余裕あるクルージングを可能にします。

単にパワフルなだけでなく、低回転域からトルクフルで非常に扱いやすい特性も持ち合わせています。ライドバイワイヤシステムによるスムーズなスロットルレスポンスと、3つの標準ライドモード(Rain, Street, Sport)により、路面状況や気分に合わせて最適な出力特性を選択できます。

オプションでさらにスポーティーに!

オプションの「TRACKモード」を追加すれば、トラクションコントロールの介入度を9段階で調整可能に。よりアグレッシブなスポーツライディングを楽しむことができます。同じくオプションの「Quickshifter+」は、クラッチ操作不要でスムーズなシフトチェンジを可能にし、ライディングへの集中力を高めます。

② 快適性とスポーツ性を両立するWP APEXサスペンション

890 SMTの大きな特徴の一つが、前後180mmという長いストロークを持つWP APEXサスペンションです。これは一般的なロードスポーツモデルよりも長く、アドベンチャーモデルに近い設定と言えます。

このロングストロークサスペンションがもたらすメリットは:

  • 優れた路面追従性:荒れた路面やギャップでも衝撃を効果的に吸収し、タイヤの接地感を常に高く保ちます。
  • 快適な乗り心地:長距離ツーリングでも疲れにくい、しなやかで上質な乗り心地を提供します。
  • 高いスポーツ性能:長いストロークを感じさせない安定感と、軽快なハンドリングを両立。ワインディングも積極的に楽しめます。

フロントフォークは伸側・圧側の減衰力、リアショックは伸側減衰力とプリロードの調整が可能で、ライダーの好みや積載状況に合わせたセッティングが可能です。

③ ライダーを支える先進の電子制御

最新のKTMモデルらしく、890 SMTも充実した電子制御システムを搭載しています。

  • コーナリングABS (スーパーモトモード付): 車体の傾きを検知し、バンク中でも最適な制動力を提供。スーパーモトABSモードでは、リアABSを解除し、フロントの介入を抑えることで、よりアグレッシブなライディングやダートでのコントロールも可能です。
  • MTC (モーターサイクルトラクションコントロール): コーナリング中の加速時など、リアタイヤのスリップを検知するとエンジン出力を最適化。リーンアングル(傾き)も考慮するため、様々な状況で安定性を高めます。介入度は3段階+OFFから選択可能。
  • ライドモード: RAIN、STREET、SPORTの3つのモードを標準装備。天候や好みに合わせてスロットルレスポンスやMTCの介入度を変更できます。
  • 5インチTFTディスプレイ: 大型で見やすいフルカラー液晶メーターを採用。回転数や速度はもちろん、ライドモード、燃料計、水温計など、豊富な情報を表示します。オプションの「KTMconnect」を追加すれば、スマートフォンと連携し、ナビゲーションや音楽再生、通話なども可能です。

これらの電子制御は、安全性を高めるだけでなく、ライダーがバイクのパフォーマンスを最大限に引き出す手助けをしてくれます。

ライバル車種との比較

KTM 890 SMTが属するミドルウェイトの「スポーツツアラー」セグメントには、魅力的なライバルが多数存在します。ここでは代表的な2車種と比較してみましょう。

Yamaha Tracer 9 GT / GT+ (ヤマハ トレーサー9 GT / GT+)

ヤマハの人気スポーツツアラー。パワフルな3気筒エンジンと充実した装備が魅力です。

  • エンジン: 888cc 水冷3気筒エンジン。スムーズで伸びやかな回転フィールが特徴。
  • 装備: 電子制御サスペンション(GT/GT+)、クルーズコントロール、グリップヒーター、フルカラーTFTメーター(モデルによる)、アダプティブクルーズコントロール(GT+)など、ツーリング向け装備が非常に充実。
  • キャラクター: よりロードスポーツ/ツアラー寄りのキャラクター。サスペンションストロークは890 SMTより短い。
  • 価格帯: 890 SMTと同等か、やや安価な傾向(モデルによる)。

890 SMTとの比較ポイント: エンジンフィール(2気筒 vs 3気筒)、サスペンションストローク、スーパーモト的な要素を求めるか、より純粋なツアラー性能を重視するか。

BMW F 900 XR (ビーエムダブリュー F 900 XR)

BMWのミドルクラス・アドベンチャースポーツ。スポーティーな走りと快適性を両立しています。

  • エンジン: 894cc 水冷並列2気筒エンジン。扱いやすさと十分なパワーを両立。
  • 装備: TFTメーター、ライディングモード、ASC(トラクションコントロール)、ABSを標準装備。電子制御サスペンションESAなどのオプションも豊富。
  • キャラクター: ロード寄りのアドベンチャースポーツ。890 SMTよりはオンロード志向が強い。デザインもBMWらしい洗練されたもの。
  • 価格帯: 890 SMTと同等の価格帯。

890 SMTとの比較ポイント: デザインの好み、サスペンションの特性(ストローク長)、ブランドイメージ、オプション構成。

KTM 890 SMTは、ライバルと比較してスーパーモト由来のデザインと長いサスペンションストロークが際立った個性となっています。単なるスポーツツアラーではなく、よりファンライド要素やアドベンチャーテイストを求めるライダーにとって、唯一無二の魅力を持つ選択肢と言えるでしょう。

どんな人におすすめ?

ユニークなキャラクターを持つKTM 890 SMTは、以下のようなライダーに特におすすめです。

① ワインディングロードが大好きなライダー

スーパーモト譲りの軽快なハンドリングと、トルクフルなエンジン、そして追従性の高いサスペンションは、まさにワインディングを楽しむために生まれてきたような組み合わせ。コーナーが続く道をヒラヒラと駆け抜ける快感は格別です。初心者でも扱いやすい素直さも持ち合わせています。

② スポーティーな走りを諦めずにツーリングも楽しみたいライダー

「ツーリングバイクは楽だけど、もっと刺激が欲しい」「スポーツバイクは楽しいけど、長距離は疲れる」… そんな悩みを抱えるライダーに890 SMTは最適です。アップライトなポジションと快適なサスペンションでロングツーリングもこなしつつ、ひとたび峠道に入ればスポーツバイク顔負けの走りを楽しめます。

③ 個性的で他とは違うバイクに乗りたいライダー

KTMならではのアグレッシブなデザインと、オレンジ/ブラック/ホワイトの鮮烈なカラーリングは、どこへ行っても注目を集めるでしょう。「ありきたりのバイクじゃ満足できない」という、個性を重視するライダーにぴったりです。

④ ミドルクラスからステップアップしたい、あるいはリターンライダー

扱いやすいエンジン特性と安定したハンドリング、充実した電子制御により、ミドルクラスからのステップアップや、久しぶりにバイクに乗るリターンライダーにもおすすめです。見た目の過激さとは裏腹に、意外なほどの乗りやすさを持っています。

購入前にチェックしたいポイント

KTM 890 SMTの購入を具体的に検討する際に、事前に確認しておきたい点をまとめました。

① 車両価格とオプション

2024年モデルのメーカー希望小売価格は1,799,000円(税込)です。これに加えて、Quickshifter+やTRACKモード、KTMconnect、グリップヒーター、クルーズコントロールなど、魅力的なオプションが多数用意されています。自分のライディングスタイルに合わせて必要なオプションを選ぶと、総額が変動するため、事前にディーラーで見積もりを取ることをおすすめします。

② シート高と足つき性

シート高は860mm。数値だけ見るとやや高く感じますが、シート前方が絞り込まれており、サスペンションの沈み込みもあるため、スペックほどの高さは感じにくいかもしれません。とはいえ、足つき性は個人差が大きい部分ですので、必ず実車に跨って確認しましょう。

③ 防風性能

標準装備のスクリーンはスポーティーなショートタイプです。レビューでは「見た目以上に防風効果がある」との声もありますが、高速道路を多用するロングツーリングがメインの場合は、より大型のスクリーン(オプション設定の有無は要確認)への交換も検討の余地があるかもしれません。

④ 維持費と信頼性

KTMは海外メーカーであり、ハイパフォーマンスモデルでもあるため、国産バイクと比較すると部品代やメンテナンス費用が若干高くなる可能性があります。指定燃料もハイオクです。また、一部のユーザーレビューでは初期の不具合(オイル漏れなど)に関する指摘も見られました。信頼できる正規ディーラーで購入し、定期的なメンテナンスを欠かさず行うことが重要です。

まとめ

KTM 890 SMT 2024年モデルは、「スーパーモタード」の刺激的な走り「ツーリング」の快適性・実用性という、二つの要素を見事に融合させたユニークなスポーツツアラーです。

KTM 890 SMT (2024) のポイント

  • スーパーモタードとツアラーの”いいとこ取り”をした独自のコンセプト
  • パワフルで扱いやすい889cc LC8cエンジン
  • 快適性とスポーツ性を両立する前後180mmストロークのWP APEXサスペンション
  • コーナリングABS(Supermotoモード付)やMTCなど、最新の電子制御を搭載
  • 個性的でアグレッシブなスタイリング
  • ワインディングからロングツーリングまで幅広く対応

価格は決して安くありませんが、その多才なパフォーマンスとライディングの楽しさは、価格以上の価値を感じさせてくれるはずです。日常の移動から週末の冒険まで、あらゆるシーンでライダーの期待に応えてくれる、究極のオールラウンダーと言えるかもしれません。

少しでも興味を持ったら、まずはKTM正規ディーラーで実車に触れ、試乗してみることを強くおすすめします。きっとそのユニークな魅力の虜になるはずです。

スペック

2024 KTM 890 SMT(国内仕様)の主要スペックは以下の通りです。

価格1,799,000円(税込)
年式2024年
排気量889cc
最高出力77 kW (105 PS) / 8,000 rpm
最大トルク100 Nm / 6,500 rpm
エンジン形式水冷4ストローク並列2気筒 DOHC 4バルブ
ミッション形式常時嚙合式6段リターン
タイヤサイズ(前)120/70 ZR 17
タイヤサイズ(後)180/55 ZR 17
ブレーキ形式(前)ダブルディスク、ラジアルマウント4ピストンキャリパー、ディスク径 320mm
ブレーキ形式(後)シングルディスク、フローティング2ピストンキャリパー、ディスク径 260mm
サスペンション(前)WP APEX 43 倒立フォーク(伸/圧調整可、ストローク180mm)
サスペンション(後)WP APEX モノショック(伸/プリロード調整可、ストローク180mm)
全長×全幅×全高非公表 × 非公表 × 非公表
ホイールベース1,502 ± 15 mm
シート高860 mm
車両重量約190kg(燃料除く)
タンク容量約15.8L
燃費(WMTC)4.6 l/100 km (約21.7km/L) ※海外参考値
乗車定員2名
その他装備コーナリングABS(Supermotoモード付)、MTC(リーンアングル連動、3モード+OFF)、ライドモード(Rain/Street/Sport)、5インチTFTディスプレイ、PASCスリッパークラッチ、ライドバイワイヤ
オプションTRACKモード、Quickshifter+、クルーズコントロール、MSR、グリップヒーター、KTMconnectなど
カラーブラック/オレンジ/ホワイト


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