バイクのカスタムの中でも、特に人気が高いのがマフラー交換です。愛車のサウンドを変えたり、見た目をスタイリッシュにしたり、さらには走行性能の変化も期待できる、魅力あさいっカスタムですよね。
しかし、「どんなマフラーを選べばいいの?」「交換したら何が変わるの?」「そもそも車検は大丈夫?」といった疑問や不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
安心してマフラー交換を楽しむために、ぜひ最後までお読みください。
バイクのマフラー交換で何が変わる?
マフラーを交換することで、主に「音」「見た目」「性能」の3つの要素が変化します。それぞれ詳しく見ていきましょう。
① 排気音の変化:サウンドで個性を演出
マフラー交換を考える最大の理由の一つが、排気音の変化でしょう。純正マフラーの多くは、騒音規制に対応するため、やや控えめなサウンドに設定されています。そこで、より個性的で迫力のあるサウンドを求めて社外マフラーに交換するライダーが多いのです。
例えば、カワサキは「RIDEOLOGY(ライディオロジー)」という開発思想の中で、「Fun to Ride(乗る楽しさ)」を追求しており、その重要な要素の一つとして「心地よいエンジンサウンド」を挙げています

音量と音質の違い
社外マフラーは、純正品に比べて消音効果が抑えられているものが多く、交換すると音量が大きくなる傾向があります。アイドリング時から、より存在感のあるサウンドを楽しめるようになります。
あまりにも音量が大きいマフラーは、日本の騒音規制に適合せず、車検に通らないばかりか、取り締まりの対象になる可能性もあるため注意が必要です。
音質もマフラーの素材や構造によって大きく変わります。例えば、チタンやカーボン製のマフラーは、深みのある低音が響きやすく、ステンレス製はクリアで高音寄りのサウンドになることが多いです。Vツインエンジンのような「ドコドコ」とした鼓動感を強調したり、レーシーで甲高い音にしたり、自分の好みに合ったサウンドを選ぶ楽しみがあります。
スリップオンとフルエキゾーストの音の違い
社外マフラーには、大きく分けて「スリップオン」と「フルエキゾースト」の2種類があります。


- スリップオンマフラー: 純正のエキゾーストパイプ(エンジンから出ている管)はそのままに、サイレンサー(消音器)部分だけを交換するタイプ。比較的安価で交換も容易なため、手軽に音質や見た目を変えたい場合に人気です。音の変化はフルエキゾーストに比べると穏やかですが、それでも純正とは違うサウンドを楽しめます。
- フルエキゾーストシステム(フルエキ): エキゾーストパイプからサイレンサーまで、排気系全体を交換するタイプ。排気効率が大きく向上するため、音量・音質ともに劇的な変化が期待でき、よりパワフルで迫力のあるサウンドを求めるライダーに選ばれます。価格は高めで、取り付けもやや複雑になります。
どちらを選ぶかは、求めるサウンドの大きさや質、予算、そして取り付けの手間などを考慮して決めましょう。
② 見た目の変化:スタイルを格上げ
マフラーはバイクの後ろ姿の印象を大きく左右するパーツです。社外マフラーはデザインや素材、カラーリングが豊富で、愛車のドレスアップ効果も期待できます。


ZX-25R 政府認証マフラー RACING LINE カーボン
デザインの多様性
社外マフラーのデザインは多種多様。レースマシンを彷彿とさせるシャープでスポーティーなデザイン、クラシックバイクに似合う伝統的なメガホンタイプ、個性を際立たせるアップタイプやショートタイプなど、選択肢は無限大です。サイレンサーの形状も、丸型、楕円形、三角形、異形など様々。バイク全体のスタイルに合わせて、好みのデザインを選びましょう。
素材による違い(ステンレス、チタン、カーボン)
マフラーの素材は、見た目だけでなく、重量や耐久性、価格、そして音質にも影響します。
- ステンレス: 錆びにくく耐久性が高いため、多くのマフラーで採用されています。比較的安価ですが、熱で変色(焼き色)しやすいという特徴も。光沢のあるポリッシュ仕上げや、落ち着いたヘアライン仕上げなどがあります。
- チタン: ステンレスより軽量で高強度、そして錆にも強い高性能素材。独特の美しい青い焼き色が付くのが特徴で、レーシーな雰囲気を演出します。価格は高めになります。
- カーボンファイバー: チタンよりもさらに軽量で、独特の織り目模様がスタイリッシュ。断熱性にも優れていますが、金属素材に比べて衝撃にはやや弱い面もあります。こちらも比較的高価です。
素材選びは、見た目の好みはもちろん、軽さ、耐久性、予算のバランスを考えて行いましょう。
カラーと仕上げ
定番のシルバー(ステンレス地やチタン地)やブラック(マット、グロス)に加え、高級感のあるクロームメッキ、さらにはバイクの車体色に合わせたカラーリングが施されたマフラーもあります。チタン特有のヒートグラデーション(青い焼き色)も人気です。仕上げによっても印象は変わり、ピカピカのポリッシュ仕上げ、渋いブラッシュ仕上げ、耐久性を高めるセラミックコーティングなど、細部までこだわることで、よりオリジナリティの高いカスタムが可能です。
③ 性能の変化:パワー・トルク・燃費への影響
「マフラーを変えると速くなる?」と期待する方もいるでしょう。確かに、性能向上を謳う社外マフラーも多く存在します。

馬力とトルクへの期待
社外マフラーは、純正品よりも排気ガスがスムーズに流れるように設計されていることが多く(排気効率の向上)、その結果、エンジンの最高出力(馬力)やトルクが向上する可能性があります。特に、高回転域でのパワーアップが期待できる製品が多いです。
しかし、ただ交換すれば必ず性能が上がるわけではありません。マフラーはエンジンとの相性が重要であり、場合によっては低~中回転域のトルクが細くなってしまい、発進時や街中での扱いやすさが低下することもあります(いわゆる「抜けすぎ」の状態)。これは、排気効率が良くなりすぎることで、適切な排気抵抗(背圧)が失われるために起こることがあります。
燃費はどうなる?
マフラー交換による燃費への影響は、一概には言えません。排気効率が良くなることで、理論上は燃費が向上する可能性もあります。しかし、実際にはサウンドの変化によってついついアクセルを開け気味になってしまい、結果的に燃費が悪化するケースも少なくありません。また、後述するように、マフラー交換に合わせて燃料噴射の調整(セッティング)が必要になる場合があり、これを怠ると燃焼効率が悪化し、燃費が悪くなることも考えられます。
スリップオンとフルエキゾーストの性能差
一方、スリップオンマフラーでも、純正サイレンサーからの交換による軽量化や、わずかながら馬力・トルクの向上が見込める場合があります。性能向上よりも、手軽に音や見た目を変えたい、少しだけ軽量化したい、というニーズに適しています。
ポイント:マフラー交換は音・見た目の変化が主目的。性能向上も期待できるが、必ずしも向上するとは限らず、燃調セッティングが必要な場合もある。大きな性能向上を求めるならフルエキが有利。
最重要!車検対応マフラーの選び方【日本の規制】
さて、ここからが非常に重要なお話です。日本で公道を走るバイクは、定期的に車検(自動車検査登録制度)を受ける必要があり、マフラーもその検査対象です。どんなにカッコよくて良い音のマフラーでも、車検に通らなければ公道を走れません。
安心してマフラー交換を楽しむために、日本の規制をしっかり理解しておきましょう。
騒音規制:音量はルールを守って
バイクの排気音には、厳しい騒音規制が設けられています。規制値はバイクの製造された年式や排気量によって細かく定められています。
主にチェックされるのは「近接排気騒音」で、これは停止状態で測定される音量です。例えば、2010年4月1日以降に生産されたバイクの場合、以下の規制値(上限)が適用されます。
- 原付一種 (~50cc): 84dB(A) 以下
- 原付二種 (50~125cc): 90dB(A) 以下
- 軽二輪 (125~250cc) / 小型二輪 (250cc~): 94dB(A) 以下
さらに、「加速走行騒音」という、実際に走行した状態での騒音規制もあります。また、近年導入された「相対値規制」により、新しいバイクほど、新車時の騒音レベルから極端に大きくならないような規制も加わっています。年々規制は厳しくなる傾向にあるため、特に新しいモデルのバイクに社外マフラーを装着する場合は注意が必要です。
注意:自分のバイクの年式と排気量に対応する正確な騒音規制値を必ず確認しましょう。不明な場合はバイクショップに相談するのが確実です。
排ガス規制:環境への配慮も忘れずに
1999年以降に製造されたバイクには、排出ガスに関する規制も適用されます。マフラー交換によって排気効率が変わると、排出ガス中の有害物質(CO、HC)の濃度に影響が出る可能性があるためです。
車検対応を謳う社外マフラーの多くは、純正同等かそれ以上の触媒(キャタライザー)を内蔵するなどして、この規制をクリアするように設計されています。車検時には、その証明として「自動車排出ガス試験結果証明書(通称:ガスレポ)」の提出を求められる場合がありますので、マフラー購入時に付属しているか確認し、大切に保管しておきましょう。
構造と取り付けのルール
騒音・排ガス規制以外にも、マフラーの構造に関するルールがあります。
- 消音機構: 2010年以降のモデルでは、マフラーの消音材(バッフルなど)が簡単に取り外せない構造である必要があります。「車検の時だけバッフルを付ける」といった行為は認められません。
- 取り付け状態: マフラーが車体に確実に取り付けられており、緩みや脱落の危険がないこと。
- 最低地上高: マフラーを含む車体の一番低い部分が、地面から9cm以上離れていること。
これらの安全基準を満たしていることも、車検に通るための条件です。
「車検対応」を見分けるポイント(JMCA認証など)
では、数ある社外マフラーの中から、どうやって車検対応品を見分ければ良いのでしょうか? 一番分かりやすい目印が「JMCA認証プレート」です。

JMCA(全国二輪車用品連合会)は、業界の自主基準として、騒音規制や排出ガス規制に適合したアフターマーケットマフラーに対して認証を与え、プレートを製品に添付しています。このJMCAプレートが付いているマフラーは、原則として車検対応と考えて良いでしょう。(ただし、経年劣化による音量増加や、プレートの付いていない中古品などは注意が必要です)。
その他、ヨーロッパの安全基準適合を示す「Eマーク」が付いている製品も、日本の規制に対応している場合がありますが、JMCA認証ほど確実ではありません。
購入前には、製品説明に「車検対応」「政府認証」「JMCA認定」といった表記があるかを必ず確認し、自分のバイクの型式・年式に適合しているかを重ねてチェックしましょう。
おすすめの車検対応マフラーメーカー
日本国内には、高品質で信頼性の高い車検対応マフラーを製造・販売しているメーカーがたくさんあります。ここでは代表的なメーカーをいくつかご紹介します。
- ヨシムラ (YOSHIMURA):
レースシーンでも活躍する老舗中の老舗。高性能・高品質で世界的に有名。「サイクロン」シリーズは定番中の定番です。 - モリワキエンジニアリング (MORIWAKI ENGINEERING):
こちらもレース活動で知られる実力派メーカー。ホンダ車との相性も良く、質実剛健な作り込みに定評があります。 - SP忠男 (SP TADAO):
「気持ちィー!」をコンセプトに、特に実用域でのパワーフィール向上を追求。「POWER BOX」シリーズが人気です。
- ビームス (BEAMS):
スタイリッシュなデザインと比較的リーズナブルな価格で人気。幅広い車種に対応するラインナップが魅力です。 - アールズギア (r’s gear):
特に大型バイクのツーリングライダーから支持を集めるメーカー。「ワイバン」シリーズは、長距離でも疲れにくい音質と性能が特徴です。
これらのメーカーの製品は、多くがJMCA認証を取得しており、安心して選ぶことができます。もちろん、これら以外にも優れたメーカーは多数存在しますので、自分のバイクや好みに合わせて探してみてください。
マフラー交換 Q&A:疑問や不安を解消
最後に、マフラー交換を検討している方が抱きやすい疑問や不安についてお答えします。
取り付けは自分でできる?
スリップオンマフラーであれば、比較的簡単な作業で済むことが多く、工具(レンチ、ソケットなど)と作業スペースがあればDIYでの交換も可能です。製品に丁寧な説明書が付属している場合も多いです。
一方、フルエキゾーストシステムの交換は、エキゾーストパイプの取り外し・取り付け、場合によってはO2センサーの移設など、やや複雑な作業になります。特にエンジンとエキパイの接合部は、締め付けトルク管理などが重要になるため、自信がない場合は無理せずバイクショップなどの専門業者に依頼するのが確実でおすすめです。
交換時の注意点(ガスケット交換など)
DIYで交換する場合も、プロに依頼する場合も、いくつか注意点があります。
- 火傷に注意: 作業は必ずエンジンやマフラーが完全に冷えた状態で行ってください。
- ガスケットは新品に: エンジンとエキゾーストパイプの接合部(エキゾーストポート)には、排気漏れを防ぐための「ガスケット」という部品が使われています。マフラーを外したら、このガスケットは必ず新品に交換しましょう。古いものを再利用すると排気漏れの原因になります。
- 取り付け後の確認: 交換後は、エンジンをかけて排気漏れがないかをしっかり確認します。また、走行後にボルトやナットに緩みがないかを定期的にチェックすることも大切です。
- 脱脂: 新品マフラーの表面に付着している油分は、エンジン始動前にパーツクリーナーなどで綺麗に拭き取っておきましょう。油分が残ったまま熱が加わると、焼き付いて変色の原因になります。
- 燃調セッティング: 特にフルエキゾーストに交換した場合など、排気効率が大きく変化すると、燃料噴射量(キャブレター車の場合はジェット類)の調整(燃調セッティング)が必要になることがあります。アフターファイアが頻繁に出る、低回転でギクシャクするなどの症状が出た場合は、専門ショップに相談しましょう。
情報収集のコツ(動画やレビュー)
「交換後の音が気になる」「他の人はどう感じているんだろう?」そんな時は、インターネット上の情報が役立ちます。
YouTubeなどの動画サイトで「(あなたのバイクの車種名) マフラー 音 比較」といったキーワードで検索すれば、純正と社外マフラーのサウンドを比較した動画がたくさん見つかります。音質や音量の変化を実際に耳で確認できるので、非常に参考になります。
また、バイク用品のレビューサイトや個人のブログなどでは、取り付けの難易度、実際に走行してみてのフィーリング、燃費の変化といった、より詳細なインプレッションが書かれていることもあります。様々な情報を比較検討して、自分にぴったりのマフラーを見つけましょう。
まとめ:自分らしいマフラーでバイクライフを豊かに
バイクのマフラー交換は、愛車のサウンド、スタイル、そしてフィーリングを自分好みに変えることができる、非常に魅力的なカスタムです。
しかし、その楽しさを満喫するためには、日本の法律(車検制度)を遵守することが大前提となります。騒音規制や排ガス規制をクリアした、JMCA認証などの車検対応マフラーを選ぶことが、安心して公道を走るための必須条件です。
今回ご紹介したポイントを参考に、ご自身のバイクとライディングスタイルに合ったマフラーをじっくりと選び、取り付けは安全に注意して行ってください。ルールを守って正しくカスタムすれば、マフラー交換はあなたのバイクライフをより一層豊かで楽しいものにしてくれるはずです。
ぜひ、お気に入りの一本を見つけて、自信とスタイルを持ってライディングを楽しんでください!